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座敷わらし――リリアン日本昔ばなし

The Child Play

 

 

――ごきげんよう――

「ごきげんよう……?」

(え……)

蓉子はふと戸惑った。

 

だれ?

 

――私は、そう私は――

 

「第四の薔薇さまですって?」

うろたえることなどめったにないはずの蓉子の声が、かすかに狼狽を帯びて。

「そんなものがいるはずは……え?」

蓉子は目を疑った。

――この場、高等部図書館にはいま、確かに、聖と江利子、そして自分しかいない。

いないはずなのに、

「……なによ、これ?」

何度数えても、

「どうしたのよ、蓉子」

「だって江利子、何度数えても、私たち――四人いるのよ」

「は? だれが四人ですって?」

「なに言ってんだか。そんなわけないじゃない」

 聖がカラカラと笑って、――ふと首を傾げた。

「……そういえば」

「どうしたの?」

 蓉子がたずねると、聖は首をひねりながら、

「いや、関係ないかもしれないけど。もう一人といえばね」

「もう一人?」

「さっき、ここの入り口で妙な子に出会ったの。首のあたりで髪を切り揃えた」

「切り揃えたって、あなたみたいに?」

江利子の問いに聖はうなづき返して、

「じっと階段に座って身じろぎもしないので、『どうかしたの、あなた?』って訊いたの」

――そしたら、その子は顔を上げて、

「『私は今まではリリアンの〈失われた薔薇〉でしたけど、今からイタリアへ行きます』って言ったの」

「――失われた、薔薇?」

蓉子はふと、いいようのない寒気に襲われた。江利子が眉をひそめて、

「何よ、それ?」

「さあ? で、とにかく」

 聖は言葉をつづけて、

「それでね、私が『どうしてそんな急に、イタリアへ?』って訊いたら」

「訊いたら?」


(――やめて)

その先を、言わないで、聖。

「そしたら、彼女ね」

言わないで。

「こう、言ったのよ」。

やめて!


――『もう、リリアンも終わりだもの』――


(――ああ)

 蓉子は天を仰いだ。

「蓉子?」

「どうしたの?」

蓉子は目をつぶった。

目をつぶって、無理強いに言葉を押し出した。

「――座敷わらし!」


座敷わらし。


座敷わらしの滞在するとき、その滞在場所は栄耀栄華を極め尽くす。――でもいったん去ると、家運は見る見るうちに傾くと伝えられている。


「さようなら、――あなたが好きでした」


そして。――リリアン女学園がどうなったか。

もう誰も知らない。

 

 

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