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銀杏鉄道999

The Ginnan Express

       

 

 

第112話

青春の歳月 さらば999 前編

 

 

 ――祐巳と祥子さまをのせた銀杏超特急999号は、リリアン終着駅に向かって、最後の旅を続けていた。

 

「あれが、姉妹の体をタダでくれる、終着駅ですか、お姉さま……」

 窓の外には――まるで虹が、縦横無尽に駆け巡っているかのような光に満たされた宇宙空間がひろがり、その行く手に――何層にも重なった紅色のガス雲を従えて、同じく真紅の光に彩られた巨大な惑星が輝いている。

 まるで大輪の紅薔薇の中心に、きらめく大きなルビーをはめ込んだような光景だ。

 ホオォ、ホホホ、ホォッ! 機関車が単発的に汽笛を鳴らして速度を上げた。

「どうしたんでしょう?」 

「超重力に引き込まれないためよ」

「超重力?」

「ここは大リリアン星雲の中心、薔薇核恒星系。全てを、光さえも引き込んでしまう超重力、スーパー・グラビテーションが働いているの。なまじっかな宇宙船では、とてもこの空域を航行して、惑星大マウントリリアにたどり着くことは――できない」

「惑星、大マウントリリア……」

「ええ。999の終着駅よ。――超マリアパワーに支えられた姉妹帝国の首都。 Sisterized Home World――姉妹化母星。いかなる男子の侵入をも絶対に許さない、姉妹化世界の聖地」

 祐巳は前方の終着駅に目をこらして、思わずつぶやいた。

「きれい……」

「そうかしら」

「お好きじゃないんですか、お姉さまは」

「あの星の表面をよくごらんなさい。赤い光点が無数に集まって、遠目にはつるんとした紅いかたまりに見えているのよ」

 なるほど、言われたとおり一つ一つの点の輝きが、全体として大きなルビーを形作っている。

「あれは――梅干しそっくりに見えなくって?」

「梅干し?」

 そっくりだろうか? 祐巳は首を傾げた。……まあ、人工着色料で染められたお弁当用の、梅干しの表面に似ていると言えば言えないこともないが。

(――いや、やっぱり無理が)

「とにかく梅干しなのよ」

 どうしても言い張るおつもりらしい。

「はあ」

「どうしてか分かって?」

「――どうしてでしょうか?」

「おにぎりの具にしたとき、水気にぬれて紅く、生々しく輝く梅干しを、あのすっぱい梅干しの粒を……私が子供のころから、とても嫌いだったから」

「はあ」

 よく分からないが――祥子さまが嫌いだったから、惑星大マウントリリアのデザインが梅干し――かどうかもよく分からないが――になったというのだろうか?

 本当によく分からないけど。

(あれを梅干しと言い張る人が、本当に他にいるんだろうか?)

「そうよ。そしてそういうことをするのは……」

「そういうことをするのは?」

「荒療治と信じるところを行うのに、全くはばからない〈親〉……よくあること」

(梅干し……荒療治……親?)

 ちょっと頭が混乱してきた。つながりがまるで意味不明だ。

(――でも、まあ)

 祥子さまがおっしゃる以上は、とりあえず目の前のものを梅干しと思い込むことに努力しようと、祐巳は決めた。

「それにしても――本当にずいぶん長い旅を無事に続けてきたわね」

「はい……よく無事だったと思います」

 いったい何度、機関車マリア様に車外へ放り出される危険を乗り越えてきたことか。祐巳はあらためて怖気をふるった。

 ――そして列車は、壮麗な姉妹都市群が地下の地下までも続く惑星表面へと降下していく。

 

 大マウントリリア星、中央ステーションのプラットホーム。

《マウントリリア、マウントリリア――終着駅、惑星大マウントリリア》

 アナウンスの声が、乗客の一人もみあたらない壮大な構内に響く。――

「ようこそ祐巳さん」

「あ……三奈子さま」

 降り立った祐巳を迎えたのは、先日あったばかりの姉妹帝国の案内人、三奈子さまだった。――今日は前回の姉妹なお姿と違って、普通の格好なので安心した。

「――お姉さま、三奈子さまが、〈ガラスの真美さん〉のお姉さまが迎えに来て――?」

 いっしょに降りたはずの祥子さまのお姿はなかった。

「祥子さまは別の通路へおいでになりました」

「そんなはずは……」

「それよりも、これを見てくださいな」

 三奈子さまは、例の『全姉妹化体総合カタログ――姉妹帝国新聞部発行、写真部協賛――』を取り出してひろげ、

「祐巳さんに与えられる姉妹の体は――これです!」

 そのページを見て祐巳は、目を丸くした。

「は?…………〈つぼみ〉?……ですか」

「そうです、祐巳さんに与えられる姉妹の体は〈つぼみ〉です、〈つぼみ〉なのです!」

 三奈子さまは繰り返していった。

「偉大なる大姉さま(グランスール)にして全宇宙、姉妹帝国の支配者であらせられるロサ・キネンシス蓉子さま――女王キネンシス陛下のご命令です」

「女王、えっと……キネンシンス陛下さま?……はあ」

「女王陛下が、祐巳さんを見込んで、姉妹帝国をささえる〈つぼみ〉とするよう、直々にに指示なさいました――もし拒否すると、祥子さまが責任を問われて極刑に処されます、すなわち」

「あの……なんですか〈つぼみ〉って?」

 極刑とはおだやかではないが、それはともかくとしても、三奈子さまが見せてくれた『総合カタログ』だけでは、とにかくわけが分からない。

 なぜなら、そのページには――

 

 

〈つぼみ〉

 

 

 ――名前が載ってるだけだったからだ。

 でもさすが、三奈子さまはそんな程度のことは意に介さないようだった。

「――なればわかるわ、それっ!」

「うわっ!」

 

「ここはどこ?」

「女王陛下の謁見室」

「わたしはだれ?」

 祐巳は足をバタバタさせた。めくりあげたスカートを両手といっしょに頭の上へ、ヒモでくくりあげられた状態だ。

「こ、これが〈つぼみ〉なんですか?」

「そうです。これが〈つぼみ〉なのです」

「前も後ろも、なんにも見えないんですけど」

 その程度の非難では三奈子さまは動じないようだ。

「よいお姿よ、祐巳さん。――まあつぼみというよりは、いささかタマネギじみた感じだけど」

 三奈子さまが論評をなさる。ついでに「そういえばタマネギ部隊って一応エリートなのよね」とおっしゃる。――意味がわからない。

(いや、今はそれどころじゃなくて)

 祐巳はうめいた。

「なんにも見えないよう」

「わたしが見えぬか、ぷくぷくしたパンツの一年生よ」

 とつぜん、美しくも威厳ある声がひびいた。

「ウギャッ! ど、どなたですか?」

「わたしはこの姉妹帝国の女王、ロサ・キネンシス蓉子」

「ろ、ロサ・キネンシンスですか」

「無礼な言い間違えをいたすな、恐竜の子供よ。そなたには私が、ヒヤシンスの親戚にでも見えると申すのか。姉妹化母星、惑星大マウントリリアの中心に存在して、全てをつかさどる、このわたしが」

「いえ、見えると申すも申さないもなくて、単に見えないんです」

「そうか。わたしにもむかし、そういうときがあった……わたしのスールとともに、長い旅を続けてきてくれてありがとう」

「はいっ、どうも恐れ入りますです」

 会話が成り立っていないような気もする。――って、いま何と?

「わたしのスール……スールって?!」

「そう、祥子はわたしのいとしい妹」

「い、妹ですか?!――お姉さまが?!」

「祥子もまた、わたしの妹として〈つぼみ〉をつとめてきた――姉妹帝国を支える最も美しい妹の一人である。そしてそなたもまた、今から祥子の妹として〈つぼみ〉となる。次世代を支える重要な、ロサ・キネンシス・アン・ブゥトンのプティ・スールとなる」

「――私のお姉さま、祥子さまもこういう格好をなさったんですか?」

 女王はそれには答えず、

「この惑星は、その全てが生きた姉妹の体の〈妹〉たちで構成されている。そなたはその妹たちの中でも最も重要な究極の妹、〈つぼみ〉となって、姉妹化母星・大マウントリリア――私と祥子の永遠の世界を支え、ともに生きるがよい」

「生きた姉妹の体の〈妹〉たちで構成?」

 い、妹天国?――祐巳はよく分からない言葉を思い浮かべてしまった。

 戸惑うその隙を突くかのように、女王キネンシスのお声があたりを圧して響き渡る。

「つぼみとなれ、一年生よ! ビスケット扉を、ビスケット扉を閉じる〈つぼみ〉となるがよい!!」

「ま、待ってください、私は一度はお姉さまと遊園地へ、私は、うわっ!!」

 ぎー、ごとん。

 上からクレーンが降りてきて、祐巳はぷらーんと吊り下げられてしまった。

 

マウントリリア終着駅

そこは妹天国とも妹地獄ともとれる

壮大な姉妹化世界の首都だった。

今……祐巳は、なにも

後悔してはいない。

自分で行こうと思った所へ、

自分の意思で来たのだから……

ただ、終わりがどうなるか

まだ分からないだけだ。

――とにかくここで肝心なことは、

「遊園地には絶対行ってみせる」ということである。

希望を捨てたわけではない……

  

(第113話に続くか) 

(to be continued or not)

 

       

 Copyright 松本零士、東映アニメーション、エイベックス

 

祥子さま……あなたは

再び帰っていくのか?

銀杏並木の夢の中へ……

さらば祥子さま……

さらば999……

さらば銀杏並木の夢……

とにかく遊園地へはいきましょうね、約束ですよ!

 

次回の銀杏鉄道999は、

最終回『青春の歳月 さらば999 後編』到着します

 

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